2021年3月下旬、かかってきた電話をとると、「本物そっくりな絵を描ける生徒さんはいますか?」というテレビ局のディレクターさんだった。
もちろんいます、と答えて思い浮かんだ2人の高校生。
1人は高校3年生のみずほちゃん。
絵はもちろん描けるのだが、彼女の才能はもっとあって学力が高いだけでなく、まだまだゆとりがあること。そして度胸が良い。それで、将来は国連の難民高等弁務官になって世界にいる困っている人を助けてもらいたいと思っている。
もう1人は高校1年生の百音ちゃん。
芸能一家に生まれついたサラブレッド。自分のモードに入ると、それがどんなに遅い時間であろうが、締め切りが過ぎていようが、自分の表現方法を押し通せる稀人。
小さい頃からお母さんとフラダンスを踊ってきた経験を持っている。おじいちゃんの音羽たかしから受け継いだ音楽の才能も半端ない。
講師の50年来教えてきた生徒で、この人は絵を描き続けていくに違いないと思わせる、数少ない人である。
何を描くかディレクターさんと打ち合わせ。同時にタネあかしのとき、見栄えがするかどうかも検討する。
「光沢のあるもののほうが、描きやすい。一見難しそうだけど、目の錯覚効果があるから簡単。」というみずほちゃん。
百音ちゃんは、光モノを描きたいと言う。
みんなでアイデアを出し合ってモチーフは、イチゴ、たこ焼き、磁石、マスタードに決定。たこ焼きはタネあかしのとき、鰹節を振りかけて踊る方が本物、と考えたけど、撮影初日のリハでは踊らず。磁石も砂鉄がくっついたほら本物という演出がしたかったが絵が地味すぎてお蔵入りに。マスタードは質感を出すのが難しく、撮影1日目を終えて、モチーフにチョコレートとオレンジが追加された。
撮影は絵を描くのに丸2日。リモートでのスタジオ収録が1日。
1枚の絵を3〜4時間ずつ、朝から晩まで描いた。
それぞれの個性に合わせて、百音ちゃんは色鉛筆、みずほちゃんはアクリル絵の具を使う。
みずほちゃんは描いている途中、人と話をしていたいタイプ。ディレクターさんやアシスタントさん、カメラマンさんから次々恋バナを聞き出す。
百音ちゃんはワイヤレスイヤホンをかけて集中。誰の話も耳に入らない。
みずほちゃんはどんどん色を置いていく。百音ちゃんはゆっくりゆっくり色を確かめながら重ねていく。
本物みたいな絵を描くためには、色を分けて、それを再現できなければならない。2人はそれができる。
アートはさらにその先にあるのだけれど。
スタジオ撮影はお台場のフジテレビで、と言われていたけれど、コロナでリモートに。
学校帰りの土曜日にコアに集まって、台本をもらって入念な打ち合わせ。
2人は厚切りジェイソンさんのメガネは伊達メガネと盛り上がる。どんなことを言っても司会者さんはプロだから、うまく対応してくれるよ、とディレクターさんに言われて安心した2人はのびのび受け答えができたようだ。
色を塗り重ねて狙った色を出す 影がつかないようモニターを見ながら 一番良い苺を選ぶ 役得役得・・・ ディレクターさんたちがカレーをご馳走してくれました 何色も色を重ねて 百音ちゃんの色作り